事業承継・M&A補助金の第14次公募が2026年4月3日(木)17時で受付を終了する。2月27日に申請が始まってから約5週間。残り4日を切った段階で、まだ申請書を提出していない事業者がやるべきことを整理した。
前回の13次公募では採択率が60.9%(293件/481件)と6割台を維持しており、主要補助金のなかでは比較的高い水準にある。ただし、締切直前の駆け込み申請は書類不備で不採択になりやすい。残り時間でどこを詰めるかが分かれ目だ。
13次から14次で何が変わったか
第14次公募は、13次公募(2025年10月末~12月初旬受付)の内容を大枠で引き継いでいるが、細かい改善が入っている。大きな制度変更というよりは「運用の厳格化と明確化」の回だ。
| 項目 | 13次公募 | 14次公募 | 変更の影響 |
|---|---|---|---|
| 申請期間 | 約5週間 | 約5週間(2/27~4/3) | 同等 |
| PMI推進枠の類型 | 2類型 | 2類型(整理・明確化) | PMI専門家活用類型と事業統合投資類型の要件がより明確に |
| 賃上げ加算 | 800万→1,000万円 | 継続(変更なし) | 最低賃金+50円以上の計画で上限アップ |
| 100億企業特例 | 最大2,000万円 | 継続 | 買い手支援類型の大型M&A向け |
| 行政書士要件 | 必須化(12次途中から) | 継続・厳格化 | 第三者に申請書作成を依頼する場合は行政書士限定 |
| 説明会 | オンライン開催 | アーカイブ配信(~4/3 17時) | まだ視聴可能 |
正直、「前回からの劇的な変化」はない。だが、PMI推進枠の要件整理は見落としやすいポイントで、後述する。
4枠の補助率と上限額を一覧で確認
| 枠 | 補助率 | 上限額 | 賃上げ加算 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 1/2(小規模2/3) | 800万円 | →1,000万円 |
| 専門家活用枠(買い手) | 1/3~2/3 | 600万円(DD加算で800万円) | — |
| 専門家活用枠(売り手) | 1/2(条件充足で2/3) | 600万円 | — |
| PMI専門家活用類型 | 1/2 | 150万円 | — |
| PMI事業統合投資類型 | 1/2(小規模2/3) | 800万円 | →1,000万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 1/2 | 150万円 | — |
※ 専門家活用枠の「100億企業特例」適用時は最大2,000万円(1,000万円以下の部分は1/2、超過部分は1/3)。
各枠の補助率・上限額の詳しい比較は事業承継・M&A補助金 4枠比較で解説している。
過去3回の採択率データ — 60%台で安定
| 公募回 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 11次 | 590件 | 359件 | 60.8% |
| 12次 | 742件 | 453件 | 61.1% |
| 13次 | 481件 | 293件 | 60.9% |
出典: 事業承継・M&A補助金事務局 公式サイト(採択結果公表ページ・2026年3月30日参照)
3回連続で60%台を維持しているのは注目に値する。ものづくり補助金の34%前後、新事業進出補助金の37%前後と比べると、しっかり準備すれば採択される確率が高い制度だ。ただし、13次で申請件数が481件に減った理由は気になるところ。12次の742件から大幅減だが、年末年始を挟んだ公募スケジュールが影響した可能性がある。
13次の枠別採択率 — PMI推進枠の通過率に注意
13次の枠別データも公表されている。
| 枠 | 申請 | 採択 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 182件 | 111件 | 61.0% |
| 専門家活用枠 | 267件 | 163件 | 61.0% |
| PMI推進枠 | 32件 | 19件 | 59.4% |
PMI推進枠はサンプル数が少ないものの、他枠よりやや低い。M&A成立後の統合計画の具体性が求められるため、「とりあえず申請」では通りにくいことがわかる。
残り4日で確認すべきチェックリスト
締切まであと4日。今から新規でGビズIDを取得するのは間に合わない(発行に2~3週間かかる)。すでにアカウントを持っている事業者が、最後の詰めとしてやるべきことを挙げる。
全枠共通の確認事項
- GビズIDプライムの有効性: ログインできるか今日中に確認する。パスワード期限切れで締切当日に慌てるケースが毎回ある
- 認定経営革新等支援機関の確認書: 事業承継促進枠・PMI推進枠(事業統合投資類型)は認定支援機関による計画確認が必須。まだもらっていないなら最優先で連絡する
- jGrants申請フォームの事前入力: 本番環境で入力を始められる。締切当日にゼロから入力すると回線混雑で詰む
- 必要書類チェックリスト: 公式サイトの公募申請手続きページに枠別チェックリストが掲載されている。1つでも漏れると不備で差し戻し
専門家活用枠の注意点
- M&A支援機関登録制度への登録確認: 利用する仲介業者・FAが登録済みか確認。未登録の場合は対象外
- デュー・デリジェンス(DD)の実施: 買い手支援類型ではDDの実施が必須。DD費用を計上する場合は上限が600万円→800万円に上がる
- 見積書の妥当性: 専門家費用の見積もりが「相場と比べて妥当か」は審査で見られるポイント
PMI推進枠の注意点
- M&A成立時期の確認: PMI専門家活用類型は「M&A成立後おおむね1年以内」が目安。時期を過ぎていないか
- 統合計画の具体性: 「なんとなくシステムを統合する」では通らない。統合のゴール、スケジュール、KPIを明記する
申請書で差がつく3つのポイント
採択率60%台は高い水準だが、逆に言えば4割が落ちている。不採択になる申請書には共通の弱点がある。
ポイント1: 事業承継の「必然性」を書く
❌ 「後継者に引き継ぐため設備投資をしたい」(だけ)
⭕ 「現経営者(68歳)の引退に伴い、後継者が主力事業のAI活用による生産性向上を計画。老朽化した検品工程をAI画像認識に置き換えることで、承継後の競争力を確保する」
審査委員が見ているのは「なぜこのタイミングで事業承継をするのか」と「承継後にどう成長するのか」の2つ。設備投資の中身だけでなく、承継のストーリーが必要だ。
ポイント2: 数値目標のBefore/After
❌ 「生産性を向上させる」
⭕ 「検品工程の所要時間を月120時間→45時間に削減(62.5%減)。不良品流出率を2.3%→0.8%に改善」
付加価値額を年率3%以上向上させる計画が必須要件。この数値目標が曖昧だと、それだけで不採択の理由になる。
ポイント3: 行政書士要件への対応
12次途中から「申請書作成を第三者に依頼する場合は行政書士限定」のルールが厳格化されている。コンサル会社やM&A仲介業者に申請書作成を丸投げしている場合、行政書士の資格を持つ担当者が関与していることを証明する書類(行政書士証憑・委任契約書)が必要だ。
自社で申請書を作成する場合はこの要件は関係ない。ただし、中途半端に「アドバイスを受けた」レベルでも、作成実態が第三者にある場合は対象になる。判断に迷ったら事務局のコールセンターに確認すること。
申請スケジュール — 今日から締切日までの動き方
| 日付 | やること |
|---|---|
| 3/31(火) | GビズIDログイン確認。jGrants申請フォームに必須項目を入力開始。認定支援機関の確認書を入手 |
| 4/1(水) | 申請書のドラフト完成。添付書類(決算書・事業計画・見積書等)を全てPDF化 |
| 4/2(木) | 最終チェック。必要書類チェックリストと突き合わせ。可能なら申請ボタンを押す |
| 4/3(金)17:00 | 締切。15時までには提出完了を目指す(システム混雑リスクあり) |
締切当日の16時台はjGrantsが混み合う傾向がある。余裕を持って15時までの提出を推奨する。
14次を逃した場合の次の機会
事業承継・M&A補助金は年間3~4回の公募が行われている。14次を逃しても、おそらく2026年5~6月頃に15次公募が出る見込みだ。
ただし注意点がある。2026年度末に向けてものづくり補助金と新事業進出補助金の統合が予定されており、補助金制度全体が再編の過渡期にある。事業承継・M&A補助金がこの再編の影響を受けるかどうかは現時点で不明だが、「次があるから」と先送りするリスクは認識しておくべきだ。
特にM&Aを検討中の企業は、案件のスケジュールと補助金の締切を合わせる必要がある。M&Aの成立時期をコントロールできるなら、公募のタイミングに合わせて動くのが合理的だ。
問い合わせ先
枠ごとにコールセンターの電話番号が異なる。間違えると対応してもらえないので注意。
- 専門家活用枠・廃業再チャレンジ枠: 050-3145-3812
- 事業承継促進枠: 050-3192-6274
- PMI推進枠: 050-3192-6228
受付時間: 9:30~12:00、13:00~17:00(土日祝を除く)
公募説明会のアーカイブ動画も4月3日17時まで視聴可能。まだ見ていないなら、事務局サイトの公募説明会ページから申し込める。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
AI導入を絡めた事業承継の計画策定や、どの補助金枠が自社に合うか迷った場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
参考・出典
- 事業承継・M&A補助金 公式サイト — 事業承継・M&A補助金事務局(参照日: 2026-03-30)
- 14次公募 公募申請手続きページ — 事業承継・M&A補助金事務局(参照日: 2026-03-30)
- 「事業承継・M&A補助金」(14次公募)の公募要領公開について — 中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-03-30)
- 14次公募 パンフレット(PDF) — 事業承継・M&A補助金事務局(参照日: 2026-03-30)
- 事業承継・M&A補助金 4枠比較 — 補助金ナビ
免責事項
本記事の情報は2026年3月30日時点の事業承継・M&A補助金事務局および中小企業基盤整備機構の公表資料に基づく参考情報です。補助金制度の内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。