AI×ものづくりの研究開発に最大3億円——中小企業庁の「Go-Tech事業」2026年度公募が2月16日にスタートし、締切は4月17日(木)17時に迫っている。前年度から枠組みが刷新されたので、変更点を整理しておこう。
正直、この制度は知名度こそ高くないものの、補助率2/3・最大9,750万円(通常枠3年間)という条件は他の補助金と比較してもかなり手厚い。AIやIoTを活用した製品・サービスの研究開発に取り組む中小企業は、選択肢に入れて損はない。
今回の最大の変更点は、旧「出資獲得枠」が「大型研究開発枠」に改編されたことだ。
| 項目 | 令和7年度(出資獲得枠) | 令和8年度(大型研究開発枠) | 変更 |
|---|---|---|---|
| 枠の名称 | 出資獲得枠 | 大型研究開発枠 | 改称 |
| 補助上限(3年) | ファンド出資予定額×2倍 | 3億円(単年度1億円) | ↑明確化 |
| 主な要件 | ファンド等からの出資が前提 | 直近3年間R&D継続+1年間1億円以上のR&D費実績 | 変更 |
| 採択想定件数 | 5件程度 | 5件程度 | 同 |
ファンドからの出資を前提としていた旧要件が、「自社の研究開発実績」を軸にした要件に切り替わった。VC・ファンドとの関係構築が難しかった製造業の中小企業にとっては、むしろハードルが下がったケースもあるだろう。ただし年間1億円以上のR&D投資実績が必要なので、ある程度の規模感は求められる。
収益納付の撤廃——地味だけど大きい変更
もう一つ見逃せないのが、収益納付に関する規定の撤廃だ。
これまでのGo-Tech事業では、補助事業で得た成果をもとに収益が発生した場合、補助金の一部を国に返還する「収益納付」の義務があった。令和8年度の採択案件からはこの規定がなくなる。
要するに、研究成果を事業化して売上が立っても、補助金を返す必要がない。研究開発型の中小企業にとっては、事業計画を立てやすくなる実利的な改善だ。
通常枠と大型研究開発枠——補助額と採択率の全体像
| 項目 | 通常枠 | 大型研究開発枠 |
|---|---|---|
| 補助率 | 中小企業者等: 2/3以内 | 中小企業者等: 2/3以内 |
| 単年度上限 | 4,500万円 | 1億円 |
| 2年間合計上限 | 7,500万円 | 2億円 |
| 3年間合計上限 | 9,750万円 | 3億円 |
| R8採択想定 | 120件程度 | 5件程度 |
| R7採択率 | 約49%(119件/241件) | 約42%(5件/12件) |
通常枠の採択率は約49%と、ものづくり補助金(40%前後)より高い水準。大型研究開発枠は5件と狭き門だが、3年間で最大3億円はインパクトがある。
なお、直近3年の課税所得が年平均15億円を超える中小企業は補助率が1/2以内に下がる点に注意。
AI・IoT研究開発は重点評価される
Go-Tech事業は「中小企業の特定ものづくり基盤技術及びサービスの高度化等に関する指針」に基づいて審査される。近年、この指針ではAI・IoT等の先端技術を融合させた研究開発が重点テーマとして位置づけられている。
過去の採択事例をみると、以下のようなAI活用テーマが実際に採択されている。
- AI(深層学習)を活用した地物自動抽出技術の研究開発
- AIが最適加工条件を提示する工作機械制御システムの構築
- 画像認識AIによる製品の外観検査自動化技術の開発
「AIを使ったものづくりの高度化」は、まさにこの補助金のど真ん中。AI関連の研究テーマなら、審査での加点が期待できる。
申請の前提条件——単独申請はできない
Go-Tech事業で意外と見落とされるのが、単独では申請できないという点だ。
以下の3者で「共同体」を組む必要がある。
- 中小企業者等(主たる研究実施者)
- 大学・公設試験研究機関等(研究パートナー)
- 事業管理機関(全国の公益財団法人等。プロジェクト管理を担当)
つまり、地元の大学や県の工業技術センターなどと連携体制を組んでおく必要がある。4月17日の締切から逆算すると、今から共同体の構築に動くのはギリギリのタイミングだ。
ただ、各地域の事業管理機関(都道府県の中小企業支援機関)に相談すれば、大学・研究機関とのマッチングを支援してもらえるケースが多い。まずは最寄りの事業管理機関に問い合わせることをすすめる。
申請スケジュール
| マイルストーン | 日付 |
|---|---|
| 公募開始 | 2026年2月16日(月) |
| 申請締切 | 2026年4月17日(金)17:00 |
| 申請方法 | e-Rad(府省共通研究開発管理システム) |
| 採択発表(予定) | 2026年7月頃 |
jGrantsではなくe-Radで申請する点も要注意。GビズIDではなくe-Radのアカウントが必要だ。e-Radの研究機関登録には2〜3週間かかるため、未登録の場合は今すぐ手続きを開始したい。
ものづくり補助金やIT導入補助金との使い分け
「うちはものづくり補助金とどっちがいいの?」という疑問は当然出てくる。ざっくり整理するとこうなる。
| 観点 | Go-Tech事業 | ものづくり補助金 | デジタル化・AI導入補助金 |
|---|---|---|---|
| 対象 | R&D(研究開発・試作品) | 設備投資・システム開発 | ITツール・AIソフト導入 |
| 補助率 | 2/3 | 1/2〜2/3 | 1/2〜4/5 |
| 上限(通常) | 9,750万円(3年) | 1,250万円 | 450万円 |
| 連携要件 | 大学等との共同体必須 | なし | IT導入支援事業者 |
| 向いている段階 | 要素技術の研究段階 | 実用化・量産段階 | 既存ツールの導入段階 |
Go-Tech事業は「まだ世の中にない技術を研究開発する」フェーズ向き。既存のAIツールを社内に導入したいだけなら、デジタル化・AI導入補助金のほうが手続きも軽い。設備投資が中心ならものづくり補助金 第23次が適している。
逆に、AIの独自アルゴリズムを開発して製品化したい、大学と組んで新しいセンシング技術を作りたい——そういうテーマならGo-Tech一択だ。
今すぐやるべき3つのこと
- 今日中に: 中小企業庁のGo-Tech事業ページで公募要領をダウンロードし、自社テーマが対象になるか確認する
- 今週中に: 最寄りの中小機構または都道府県の事業管理機関に連絡し、大学・研究機関とのマッチングを相談する
- 4月上旬まで: e-Radの研究機関登録を完了させ、共同体メンバーと申請書のドラフトを仕上げる
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
AI導入の計画策定や、どの補助金が自社の研究開発テーマに合うか分からない場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
免責事項
本記事の情報は2026年3月25日時点の中小企業庁およびe-Radの公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず中小企業庁の公式ページで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
参考・出典
- 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業) — 中小企業庁(参照日: 2026-03-25)
- e-Rad 府省共通研究開発管理システム — 文部科学省(参照日: 2026-03-25)
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-03-25)