「IT導入補助金でクラウドツールやAIシステムを導入したい」と調べていた人は注意してほしい。2026年度から、この補助金の正式名称が「デジタル化・AI導入補助金」に変わった。
制度の中身も変わっている。補助上限額は最大450万円(4プロセス以上の導入が条件)、小規模事業者で賃上げ要件を満たせば補助率は最大4/5(80%)に達する。AIツールや業務自動化ソフトの導入に使いやすい制度として、2026年度はさらに使い勝手が向上した。
3月30日から申請受付が始まり、1次締切は5月12日。すでに動いていない企業は出遅れている段階に入っている。
前回からの最大の変更点:名称変更は「見た目だけ」ではない
2025年度まで「IT導入補助金」だったこの制度、名称が変わっただけでなく、AI導入を前提とした制度設計に大きく舵を切った。
| 変更点 | 2025年度(IT導入補助金) | 2026年度(デジタル化・AI導入補助金) |
|---|---|---|
| 名称 | IT導入補助金 | デジタル化・AI導入補助金 |
| 上限額(最大) | 450万円(A類型・B類型合算) | 450万円(通常枠B類型) |
| 補助率(最大) | 3/4 | 4/5(小規模・賃上げ要件あり) |
| AI関連の扱い | 一般ITツールと同列 | AI専用加算・AI活用要件が強化 |
| 申請開始 | 各回の公募期間による | 2026年3月30日(1次) |
「名称が変わっただけで中身は同じ」と思っていると痛い目を見る。補助率の計算方法や、AI活用に関する審査基準が変わっているからだ。
5枠の補助率・上限額を完全比較
通常枠(最も使われる枠)
| 種別 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|
| A類型(1〜3プロセス) | 1/2以内 | 5万〜150万円 |
| B類型(4プロセス以上) | 1/2以内 | 150万〜450万円 |
| ※最低賃金近傍事業者 | 2/3以内 | 同上 |
「プロセス」とは、会計・受発注・決済・ECなど定められた業務プロセスの区分。4プロセス以上カバーするITツールを導入すれば上限450万円に達する。ツール1つでも複数プロセスをカバーしていればB類型に該当する場合がある。
補助率が最大4/5(小規模事業者かつ賃上げ要件充足)になるのは、後述のインボイス枠・低賃金事業者向け加算の組み合わせで実現する。
インボイス枠①:インボイス対応類型
| 対象 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|
| ITツール(50万円以下) | 3/4以内 | 最大350万円 |
| ITツール(50万円超) | 2/3以内 | 最大350万円 |
| PC・タブレット等 | 1/2以内 | 最大10万円 |
| レジ・券売機等 | 1/2以内 | 最大20万円 |
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応に使えるITツールが対象。会計ソフト・受発注システム・POSレジ等。
インボイス枠②:電子取引類型
| 対象 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 2/3以内 | 最大350万円 |
| 大企業 | 1/2以内 | 最大350万円 |
取引先とのEDI(電子データ交換)システムの導入に特化した枠。
セキュリティ対策推進枠
| 対象 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|
| 通常 | 1/2以内 | 5万〜150万円 |
| 小規模事業者 | 2/3以内 | 5万〜150万円 |
「サイバーセキュリティお助け隊サービス」として登録されたセキュリティツール・サービスが対象。AI導入に伴うセキュリティ強化としても活用できる。
複数者連携枠
| 対象 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|
| 幹事法人 | 対応類型に準じる | 総合上限3,000万円 |
複数の中小企業が共同でデジタル化を進める場合の枠。単独申請では上限に届かない大規模システム導入に使われる。
上限450万円の条件:4プロセスの壁
450万円を狙うならB類型(通常枠)の4プロセス以上要件をクリアする必要がある。主な業務プロセスの区分は以下の通り。
| プロセス区分 | 具体的なツール例 |
|---|---|
| 会計・財務 | 会計ソフト、経費精算ツール |
| 受発注 | 受注管理、発注管理システム |
| 決済・請求 | 請求書発行、キャッシュレス決済 |
| EC・販売 | ECカート、POS、在庫管理 |
| 顧客管理 | CRM、SFA、顧客台帳 |
| 総務・人事 | 勤怠管理、給与計算、労務管理 |
| 供給・在庫 | 倉庫管理、ロジスティクス |
1つのツールで複数プロセスに対応しているものも多い。たとえばクラウド型ERPや統合型SaaSは4〜5プロセスをカバーしているケースがあり、単一ツールでB類型に該当することもある。
正直なところ、「どのプロセスに該当するか」の判断は事務局とのすり合わせが必要で、自己判断で決めると後から覆されるリスクがある。IT導入支援事業者に相談して確認するのが確実だ。
申請スケジュール(2026年度1次)
| マイルストーン | 日程 |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年3月30日(月)10:00〜 |
| 1次締切 | 2026年5月12日(火)17:00 |
| 交付決定予定 | 2026年6月18日頃 |
| 事業実施期間 | 交付決定日〜2027年1月31日 |
| 実績報告期限 | 2027年2月28日 |
申請は先着順ではなく審査型。締切ギリギリまで引き延ばすと申請書の完成度が落ちる。余裕を持って5月上旬には提出を完了させたい。
IT導入補助金(デジタル化AI補助金)の5枠の詳細な補助率比較はデジタル化AI補助金の補助率一覧で詳しく解説している。
申請に必要な準備
Step 1: IT導入支援事業者の選定(今すぐ)
デジタル化・AI導入補助金は、事務局に登録済みのIT導入支援事業者と組んで申請する仕組み。補助金申請は支援事業者と協力して行う。
選定のポイントはIT導入支援事業者のトラブル対処法でも解説しているが、まず「事務局の登録済み事業者リストに載っているか」を確認することが第一歩。
Step 2: GビズIDプライムの取得
取得に1〜2週間かかるため、早急に申請する。
→ GビズID取得ガイド
Step 3: 導入するITツールの選定
IT導入支援事業者が登録している「補助対象ツールリスト」から選ぶ。AI、クラウド会計、CRM、ERPなど幅広いツールが登録されている。
Step 4: 事業計画の策定
「どの業務課題をどのツールで解決するか」を数字で示す計画書を作る。B類型(450万円上限)を狙うなら4プロセス以上カバーする根拠を明確にする必要がある。
Step 5: 申請書作成・提出(3/30以降)
「IT導入補助金申請マイページ」(事務局提供)にログインして申請書を作成。IT導入支援事業者が一部手続きを代行してくれる場合もある。
審査で落ちる典型パターン
失敗1: 計画書がツールの機能説明になっている
❌ 「このCRMは顧客管理・営業支援・メール配信が一体化した高機能ツールです」
⭕ 「現在、顧客情報は3つのExcelに分散し営業担当5人の重複作業が月40時間発生している。CRM導入により月10時間に削減し、1件あたりの提案精度を向上させる」
審査委員が知りたいのは、ツールの素晴らしさではなく「このツールが必要な理由」だ。
失敗2: プロセス数の根拠が曖昧(B類型申請時)
❌ 「このツールは会計・受発注・決済に対応しているのでB類型で申請」
⭕ 事務局の定義する業務プロセス区分表に照らし合わせ、どのプロセスをカバーするか具体的に示す
プロセス数の認定はグレーゾーンが多い。IT導入支援事業者との確認必須。
失敗3: 交付決定前にツール導入を開始してしまう
❌ 申請後に「多分通るだろう」とツールの契約・支払いを進める
⭕ 交付決定通知書が届いてからツールの契約・支払いを行う
補助金の鉄則だが、初めて申請する人ほどやってしまうミスだ。
失敗4: IT導入支援事業者選びを軽視する
❌ 価格が安い、または知り合いの業者を何となく選ぶ
⭕ 採択実績・担当者の補助金知識・アフターサポートを確認してから選ぶ
IT導入支援事業者の質が、申請書の完成度に直結する。
2次締切(2026年6月15日)直前チェック:今から間に合うか確認する方法
1次締切(2026年5月12日)を逃した事業者に向けて、事務局が正式に公表している2次以降のスケジュールをまとめる。
| 回次 | 申請締切日 | 交付決定予定日 |
|---|---|---|
| 2次締切 | 2026年6月15日(月)17:00 | 2026年7月23日(木)予定 |
| 3次締切以降 | 随時公表予定 | 順次公表予定 |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公式スケジュール(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局、参照日:2026-06-13)
2次締切は2026年6月15日(月)17:00。事務局が「確定している募集回のスケジュールのみ公表」としており、3次以降の日程は未公表だ。6月15日が事実上、直近の申請機会として確定している。
6月15日に間に合わせるための最低条件
| 準備事項 | 目安期間 | 間に合うか(6/15時点) |
|---|---|---|
| GビズIDプライム取得 | 1〜2週間 | 6月1日までに申請済みなら間に合う可能性あり |
| SECURITY ACTION宣言 | 即日 | 今すぐ実施可能 |
| IT導入支援事業者の選定・連絡 | 数日〜1週間 | 今週中に連絡必須 |
| 申請書・事業計画策定 | 1〜2週間 | IT導入支援事業者と並行で進めれば可能 |
GビズIDプライムを取得済みであれば、今すぐIT導入支援事業者に連絡することで6月15日の申請に間に合う可能性がある。GビズIDが未取得の場合は、2次締切は事実上困難だ。3次以降の募集を待つか、他の補助金と並行して検討することになる。
補助率4/5(80%)が実現する正確な条件:公募要領の記載をそのまま解説
「補助率4/5」という数字は頻繁に目にするが、どの枠でどの条件を満たした場合に適用されるのかが曖昧なまま理解している経営者は多い。公募要領(2026年5月15日改定版)の記載に基づき、正確に整理する。
補助率4/5が適用される唯一の枠:インボイス枠(インボイス対応類型)
| 条件 | 補助率 | 補助上限 |
|---|---|---|
| 中小企業・補助対象額50万円超の部分 | 2/3以内 | 最大350万円 |
| 中小企業・補助対象額50万円以下の部分 | 3/4以内 | 最大350万円 |
| 小規模事業者・補助対象額50万円以下の部分 | 4/5以内 | 最大350万円 |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)4ページ表、中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(TOPPAN株式会社運営)
補助率4/5は「インボイス枠(インボイス対応類型)において、補助対象額が50万円以下の部分、かつ申請者が小規模事業者に該当する場合」に限定される。通常枠のA類型・B類型では適用されない。
「小規模事業者」の定義(公募要領2-1-1より)
| 業種分類 | 小規模事業者の定義(従業員数) |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
「常時使用する従業員」の数が上記以下であれば小規模事業者に該当する。ここでいう「常時使用する従業員」には会社役員・個人事業主本人は含まれない。
通常枠の補助率:上限は1/2(2/3の特例あり)
よく混同される通常枠の補助率を確認しておく。
| 申請種別 | 補助率 | 補助額 | プロセス要件 |
|---|---|---|---|
| A類型(通常) | 1/2以内 | 5万〜150万円未満 | 1プロセス以上 |
| B類型(通常) | 1/2以内 | 150万〜450万円以下 | 4プロセス以上 |
| A類型(低賃金事業者特例) | 2/3以内 | 5万〜150万円未満 | 1プロセス以上・特例条件あり |
低賃金事業者特例(2/3)は「令和6年10月から令和7年9月の間で、地域別最低賃金以上かつ令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある事業者」が対象(公募要領記載)。通常枠で補助率4/5は存在しない。
「最大4/5」という表現で通常枠全体の補助率が高いように誤解されることがある。実際は通常枠で最大4/5になるわけではなく、枠・条件・補助対象額の組み合わせで適用される補助率が変わる。申請前にIT導入支援事業者と共に、自社が該当する枠と補助率を確認することが必須だ。
最新の公募要領はデジタル化・AI導入補助金2026 資料ダウンロード(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局)から確認できる。
今日から動くべきアクション
1. 今日: GビズIDプライムの取得申請を開始する(1〜2週間必要)
2. 今週中: IT導入支援事業者に問い合わせ、自社に合うツール候補を絞り込む
3. 4月中旬まで: 事業計画書の骨子を作成し、IT導入支援事業者と擦り合わせる
4. 5月12日まで(1次締切): 申請書完成・提出
デジタル化・AI導入補助金の申請についてどの枠が最適か分からない場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。
あわせて読みたい:
– デジタル化AI補助金の申請手順・マイページ操作ガイド
– IT導入支援事業者の選び方7つのポイント
– 補助金申請書の書き方ガイド
参考・出典
– デジタル化・AI導入補助金2026 概要 — IT導入補助金事務局(参照日: 2026-03-24)
– デジタル化・AI導入補助金 公募要領 — 中小企業庁(参照日: 2026-03-24)
– デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト — 中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-03-24)
– 中小企業庁 デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領公開 — 中小企業庁(参照日: 2026-03-24)
– AI導入補助金2026制度概要 — 中小企業庁(参照日: 2026-03-24)
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年3月24日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金制度の内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ずデジタル化・AI導入補助金公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
